おとのこと

駅の音のことを話します

ATOS放送の変なパーツ探検隊 乗車口案内編

 以前、音声ファイルの整理をしていたところ、鎌倉駅の接近放送で「足元、青色の、番号」と流れているのを発見した。私もある程度はATOS放送を録っているので「乗車口」や「柱番号」のようなパーツはよく聴くが、この「番号」という放送は他に聴いたことがなかった。

 ATOSの放送を調べたいと思った時にまず参照するサイトと言えば、「ATOS放送各駅現況」だ。

atosmatome.wiki.fc2.com

その名の通り各駅でどのようなATOS放送が流れるかが記されていて、具体的な放送文面もしばしば詳細に書かれている。そこで、サイト内検索を使って「番号」パーツが使用されている駅を調べてみると……

鎌倉駅以外での使用例が見つからなかった


 鎌倉駅くらいでしか使われない「番号」というパーツがわざわざ用意されているというのはとても面白いことではないだろうか。もちろん、各駅現況は全ての放送の文面を記してあるわけではないから、昔の使用駅までは網羅できないものもある(実際、その後「番号」パーツの音声が鎌倉駅以外で流れているのを発見する、後述)が、いずれにせよ使われている駅はほとんどないことには変わりがなさそうだ。

 そして、このようなパーツがあるということは、きっと調べれば他にもいろいろな知らないパーツが出てきそうだ。さあ、ATOSの変なパーツ探しを始めよう。

※この記事の内容の最終更新は2022年7月18日時点です。間違った情報がある場合はお伝えください。

今回注目する放送

 今回は乗車口案内の付帯に注目してみよう。

 行き先や停車駅のような固有名詞が絡むパーツは、列車ごと・路線ごとに放送を特集したりする動画があったりするから認識されやすいし探しやすいが、ちょっとした付帯に紛れている一般的なパーツなどは注目されにくいと思うから、敢えて一般的な付帯の一つである乗車口案内を選んだ。ここでいう乗車口案内とは、「付帯について - ATOS放送各駅現況」のページの一番下にあるようなもので、例えば次のように流れる。

  • 足元のオレンジ色、○両、乗車口○号車から、○号車で、お待ちください。

  • グリーン車は、足元の数字○番と、○番で、お待ちください。

  • 足元白い、踊り子、号、乗車口で、お待ちください。

 上では、今回のターゲットを分かりやすくするために①~④の記号を振った。実際は省略されたりする場合があるが、上の①~④で分けておく。だいたい次のように見なせる。

  • ①……見るべき場所(足元・頭上・軒下)

  • ②……

  • ➂……見るべき印(乗車口、柱番号、数字など)

  • ④……何号車か/何番か

 このように分ければターゲットが見えてくるし、調べやすくなる。

 今回は、①~➂のパーツを調べる(④は別の機会に調べ直すことにする)。また、途中にある「○両」は増解結の放送、「踊り子」は予告や接近など別の箇所で流れると考えられるので除外する。

調べ方

 まず、文面を想像し、ありそうなパーツを予想する。例えば、色パーツとして「青色」という言い回しはありそうだと考える。次に、ATOS放送各駅現況のサイト内検索を行う。各駅現況のページでは、放送文面が記述されている場合は、パーツごとに読点で区切って書かれているので、サイト内検索で「青色、」と打ち込めば、「青色の」というパーツに引っかかることなく検索できる。全ての文面が掲載されているわけではないが、これでかなりヒットする。または、Twitterなどの情報源を当たる。Twitterで「ATOS 軒下」などと検索すると、「軒下」パーツに関するツイートが見つかったりする。

 このようにして情報を得たら、実際にYouTubeなどで流れていることを確認する。現地で聴くのも1つの手段であり、意外とネット上にはない情報が得られたりする。このようにして、2022/7/18までに以下のような情報が得られた。

①:足元・頭上・軒下

 「足元の」「頭上の」「軒下の」のようなパーツ。5種類見つかり、その使用駅は以下のようになった。赤字は過去に使用していたもの、空欄は使用例が見つからなかったものである。

田中向山津田
足元多数多数東戸塚保土ヶ谷磯子
足元の多数多数南越谷
頭上の武蔵小杉品川武蔵小杉、宇都宮
軒下土浦土浦
軒下の池袋池袋

 解説していこう。まず「足元」と「足元の」は、長さが異なる列車が来るホームやグリーン車のある列車が来るホームなどで非常によく使われる。ただ、津田氏によるこれらのパーツは残り少なくなっている。ATOS各駅現況で調べた限りでは、「足元」は東戸塚保土ヶ谷磯子の3駅、「足元の」は南越谷のホリデー快速しか見つけられなかった。

 次に「頭上の」。これは「頭上の、成田エクスプレス、乗車口案内板で」と使われるパーツであり、現在は武蔵小杉、品川だけだと思われる。昔は宇都宮でも寝台特急の案内時に使われたようだ。

 さらに「軒下の」というパーツがある。これは、ATOS各駅現況の「付帯について」の例文で発見し、こんなものがあるのかと驚いたパーツである。池袋のNEXでのみ使われていたようだが、残念ながら直近のダイヤ改正でNEXが池袋に乗り入れなくなり消滅したと思われる。また、昔は「軒下」というパーツが土浦で使われていた。以下の動画の19:29からの接近放送(津田氏)、22:41からの接近放送(向山氏)で存在が確認できる。

www.youtube.com

②:色

 乗車口の色として使われていそうな色を片っ端から打ち込んでみた。パーツとしては「○色」「○色の」の他に、「赤い」のように「~い」となるものも調べた。さらに、調べていくと「緑の」が見つかったため、「○の」というパーツも探した。見つけられた使用駅は以下のようになった。

 まずは赤、青、黄色。いずれの色も、津田氏の放送の現存は確認できなかった。

田中向山津田
赤い池袋戸塚池袋
赤色東京東京、錦糸町船橋
赤色の葛西臨海公園新木場、葛西臨海公園津田沼
青の品川
青い赤羽など赤羽など
青色多数多数船橋(臨時列車)
青色の多数多数津田沼
黄色い新日本橋など数駅新日本橋など数駅
黄色上尾
黄色の尾久など数駅尾久など数駅武蔵溝ノ口

 赤はかなり少ない。「赤い」は戸塚や以前の池袋でNEXの案内用に使われていた。「赤色」は東京のひたち、ときわ、アクティーで使用されている他、錦糸町4番線の5両編成の特急(あやめ祭り新宿さざなみなど)で使用されている。津田氏の放送については、船橋特急あやめ祭りの案内に使用されていた(田中氏になってからは知らない)。「赤色の」は京葉線の案内のために新木場と葛西臨海公園で使用される他、津田沼3番線の5両編成の特急(あやめ祭りなど)で使用されている。

 一方、常磐線横須賀線中央本線で使われる色である青はかなり多い。「青色」「青色の」は多いが、「青い」という言い回しは比較的少なく、赤羽の10両編成などで使われる。津田氏の「青色」は、船橋の外房初日の出号で流れたようだが、他にも使われていたかもしれない。津田氏の「青色の」は現在でも津田沼3番線の9両編成の特急(新宿さざなみなど)で流れる。

 また、「青の」というパーツが品川12番線の9両編成の特急で使用されている(湘南で確認)。これは他に全く聞いたことがないパーツであり、現地で確認して衝撃を受けた。品川以外での使用例は知らない。

 黄色はやや少ない。横須賀線で多く使用される傾向にあるようだ。なお、「黄色」というパーツは見つからなかった。ありました。上尾で使われていたらしいです。↓↓

- YouTube


 次にオレンジ、緑、水色

田中向山津田
オレンジ色渋谷など数駅渋谷など数駅宇都宮
オレンジ色の多数多数東戸塚保土ヶ谷
緑の赤羽川崎、赤羽土浦
緑色真鶴など数駅真鶴など数駅
緑色の多数多数東戸塚磯子
水色鴻巣
水色の尾久など数駅尾久など数駅

 オレンジと緑はよく使われる色である。オレンジは中央線、SSL常磐線以外のUTLで、緑は横浜線常磐線やUTLやSSLで使われる。水色はやや少ないが、京浜東北線などで使われる。いずれも津田氏はほぼ消滅しているようだ。

 なお、「緑の」というパーツが川崎駅1番線の踊り子で使用されているが、このパーツもほとんど使われた例がない。先ほどの「軒下」のところで紹介した動画で、土浦の津田氏の「緑の」というパーツが聴きとれる。また、上尾駅でも向山氏のパーツが流れていたようだ(以下の動画参照)。しかし、田中氏のものは見つけられていないし、他で使用されている例も知らない。追記:2023年2月からは赤羽駅でも使われているようだ。

youtu.be

 また、鴻巣駅で単に「水色」と読み上げている次の動画が見つかった。これ以外の採用例は分からず、「青の」「緑の」と共にまさにATOS放送の変なパーツと言えそうだ。

youtu.be

 最後に、紫、黒、白。

田中向山津田
紫色船橋(あずさ)八王子船橋(あずさ)
紫色の東京東京
黒の国分寺国分寺
黒色東京東京
白の籠原籠原
白い取手取手、鴻巣、横須賀荒川沖など常磐線
白色荒川沖など数駅荒川沖など数駅

 紫と黒は使用例がとても少なく、見つけられたのは表に記したもののみである。東京は中央線ホームで、特急はちおうじは黒、それ以外の特急は紫の乗車口案内が流れるようだ。東京駅中央線ホームに乗車位置案内が付いたのは田中氏になった後なので、津田氏の「紫色の」や「黒色」のパーツは不明である。また、国分寺の「黒の」はNEXで流れるが、こちらは津田氏の頃も流れていた。この他にも、以前は「紫色」パーツが立川で流れていた。また、実際の音声を見つけられていないが、高尾のホリデー快速やまなしで「紫の」が流れたという情報もある。

 これらに比べると「白」はまだ使用例がある方で、常磐線でよく使用されている。ただし、「白の」は籠原しか見つからなかった。以前は日野でも「白の」パーツが流れていたようだ。

 これ以外に、黄緑、ピンク、桃色、茶色などを調べたが、これらはさすがに存在しないようだ。

➂:見るべき印(乗車口、柱番号、数字など)

 「乗車口」という案内はよく聴くが、それ以外にも、「柱番号」「数字」といったパーツ、自分が偶然聴いたことのある「番号」「枠」「乗車口案内板で」パーツなどを探した。色パーツと異なり簡単には想像が利かないので調べにくかったが、さすがに以下に記すもの以外はないと思う。

田中向山津田
乗車口多数多数磯子、南越谷
乗車口で多数多数東戸塚保土ヶ谷
乗車口案内板池袋東神奈川宇都宮
乗車口案内板で武蔵小杉、籠原品川、籠原武蔵小杉
数字逗子、大船、川崎逗子、大船、川崎逗子など
柱番号武蔵小杉など数駅武蔵小杉など数駅武蔵小杉など
番号鎌倉鎌倉鎌倉
取手取手
ラベル川崎川崎船橋(臨時列車)
ラベルで武蔵小金井、王子?武蔵小金井

 「乗車口」、「乗車口で」は最も基本的なパーツで、様々な駅で使われている。しかし、津田氏による放送については消滅が近づいていると言える。

 「乗車口案内板(で)」パーツは、武蔵小杉と品川ではNEXの乗車口案内で使われる他、籠原、東神奈川でも使われている。以前は池袋のNEX、もっとさかのぼれば宇都宮の寝台特急の案内でも使われていた。

 「数字」は意外と使用駅が少ないパーツである。これに比べれば「柱番号」の方が多く、横須賀線だけだが数駅で使用されている。「番号」は、この取り組みの発端となったパーツで、現在は鎌倉以外ないと思われるが、「【161音声】向山ATOS 自動放送集 ~普通電車編 ② ~【向山佳比子】 - YouTube」(先ほどの「緑の」で紹介した上尾駅の放送)でも確認できる。

 「枠」はまたレアな放送で、現在は取手のみのようだ。私は昔新橋で録ったのだが、新橋は2年ほど前に「枠」パーツを使わなくなったようだ。「ラベル」パーツは、以前は川崎駅1番線で使用されていたようだが、現在は2番線で使われている。ただ、両数によって異なる可能性もあり、確認を進めたい。また、船橋の外房初日の出号で「ラベル」パーツの津田氏のものが流れたようだ。さらに「ラベルで」というパーツもあり、武蔵小金井で使われていたことで有名(?)だが、一時期王子でも使われていたとか(各駅現況より)。

おまけ:「号」

 最初の方で「踊り子、号、乗車口」のような例を出したが、このように列車愛称の後に続く「号」パーツを使用している駅は意外と少ない。「あずさ、乗車口」とか「ホリデー快速鎌倉、乗車口」のように、間にわざわざ「号」を挟まないところが多いようだ。そのため、以下の2駅しか見つからなかった。ただ、探せばもっと見つかるかもしれない。

 小田原は特急湘南と踊り子、大船は踊り子で流れるようだ。昔は立川のスーパーあずさでも流れた。

田中向山津田
(列車愛称→)号小田原小田原、大船

まとめ

 今回の調査では、①(見る場所)としては「足元」「足元の」「頭上の」「軒下」「軒下の」の5種類あることが分かった。また、②(色)は赤、青、黄、オレンジ、緑、水色、紫、黒、白の9色があり、それぞれの後ろに「の」が付いたり「~い」と形容詞形になったりした様々なバリエーションがあることが分かった。そして、➂(見るべき印)はオーソドックスな「乗車口」から、ほぼ使用されていない「番号」「ラベルで」まで多様であることが分かった。

 このページの内容をまとめたスプレッドシートを以下で公開する。また、新たな情報があったらぜひ教えていただきたい。新たな情報を得た場合、記述を変更する場合がある(最終更新日:2022/7/18)。

docs.google.com

 最後に、この記事で紹介したような様々なパーツを探すことができたのは、ATOS放送各駅現況をまとめてくださっている方々、YouTubeで様々な放送の動画をアップロードしてくださっている方々などのおかげです。ありがとうございます。